運命とは必然なもの

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本当は戦いなんてやりたくない








「本当はこんな戦いしたくないんだ。でも俺は軍属だから従わないといけなかった。」
ロイに抱きしめられてしばらくするとエドがぽつりと言った。
「俺もだ。こんな無意味な戦いするべきじゃない。」
エドの言葉にロイも同意すると何かを決心したようにロイが
「皆のところへ戻ろう。そして戦いをやめさして大総統府へ行こう。」
とエドの腕を引っ張って皆のところへ歩き出した。
「へっ?何しに大総統府へ行くんだよ!」
「何しにってこの戦いをやめるよう大総統に言うんだ。」
「はっ?!ちょ、何言ってんだよロイ!」
「いいから。」
ロイはエドを無理やり黙らせてエドに自分の部下のところへ行き、大総統府へ行くことを伝えてきてくれと言った。自分も部下達のもと
へ行き、大総統府へ行くことを告げた。
「じゃあいよいよなんすね。」
部下の1人が言った。
「ああ、いよいよだ。お前達着いてきてくれるな?」
「「「「「「もちろんです、ボス!」」」」」」








―大総統府
「いけません!ここを通すわけにはまいりません!!」
「大丈夫だ、敵じゃない。」
「しかし!」
大総統がいる執務室までの廊下をロイと大総統の秘書が言い合いをしながら進み、その後ろをロイの部下であるリザとエドが着いてき
ていた。
(敵じゃないってどういうことだ?)
ロイが言った言葉にひっかかりを覚えたエドだったが何も言わずに2人の後を着いていっていた。
「大総統!!」
色々言い合いをしている間に大総統がいる執務室に到着したようでロイが扉をバーンと開けると中にはソファで寛いでいる大総統がい
た。
「やっと来たか。」
「申し訳ありません、大総統。止めることができなくて・・・。」
本当に申し訳なさそうに言う秘書に大総統は笑顔でかまわない、下がっていいと言った。秘書が出て行き、ドアが閉まったのを確認す
るとロイが大総統に怒鳴るように言った。
「大総統!もうこれ以上国家錬金術師とマフィアを戦わせるのをお止めください!」
「だってマフィアを潰さないといつまでもお前が帰ってこないだろ?」
「あなたがそうやって無理やり俺を連れ戻そうとするから抵抗するんじゃないですか!」
(なんだこの会話?)
黙ってロイと大総統の会話を聞いていたエドはあまりにも敵同士の会話にしては不自然だと感じていた。
が、次のロイの台詞で不自然だと感じたわけがわかった。
「もうマフィアなんかやめて私の後を継いで早く結婚してくれ。」
「父さんっ!!」
(は・・・?)
「え―――!!!!!!親子ぉ?!」
突然叫んだエドに3人はびっくりしてエドの顔を見た。
「ああ、鋼の錬金術師君は知らなかったのかな?ロイは私の息子だよ。」
「えっ、だって、マスタングって・・・。」
「私はロイに後を継いで欲しかったのだがロイが嫌だと言って家を飛び出した上に母親の旧姓であるマスタングを名乗ってマフィアのボ
スになったんだよ。私の何がそんなに気に入らなかったんだね?」
「軍のやりかたが気に入らなかったんですよ。武器を持っていない民達に向かって銃をむける軍がね。実際俺の仲間の中にも軍に家
族を殺されて恨んでいる奴もいる。でも、今ならあなたの後を継ぎますよ。」
「本当か?!ロイ。じゃあ、私の後をお前に譲ろう。」
「ありがとうございます。俺は思ったんですよ軍を中から変えてやろうって。愛する人と共に。」
「愛する人?お前もやっと結婚する気になったか!で、相手は?」
「ここにいますよ。」
そしてロイが顔を向けたほうにはエドがいた。
「おお!エルリック君かね!」
「え、あの・・・。」
「あら、そうだったんですか?」
「ああ、でもまだ結婚までは言っていないんだ。さっき恋人同士になったばっかりでね。」
「け、結婚?!」
「あら、ボスってばまだ言ってなかったんですか?あ、もうボスではありませんね。」
「マフィアは解散するのか?」
「当たり前ですよ、大総統になるんですから。」
「そうかそうか、それはいいことだ。で、エルリック君。君はロイと結婚する気はあるのかね?」
「へっ?!」
3人で盛り上がっていたのにいきなり話を振られエドがびっくりしていると
「エド、俺は大総統になってこの国を平和な国にしたい。君に俺の隣で平和になる国を見て欲しい。」
ロイがちゃんとしたプロポーズをエドに言うとエドは真っ赤な顔をして下を向いてしまった。
「・・・・・・。」
「ダメか?」
ロイが不安そうな声で聞くとエドは首を横に振った。
「じゃあ!」
「でも、今はダメだ。」
「どうして?俺との結婚は嫌か?」
「そうじゃない。ロイのことは好きだし、ずっとそばにいたいと思う。でも、俺は大学を卒業したいし、研究もしたい。それに家に兄貴と弟も
いる。兄貴はあんまり体強くないし、弟には何も心配させずに勉強させてやりたい。だから今は結婚できないんだ。」
エドが結婚できない理由を言うと一瞬の沈黙の後、ロイが決心したようにエドに言った。
「わかったよ。君と弟が卒業するまで待つよ。たかが2.3年心変わりなんてしないよ。君の家族が全員落ち着いたら君を迎えにいく。それ
までに俺はこの国を平和にして立派な大総統になるよ。それでいいかい?」
ロイに言われた言葉が嬉しくてエドは思わず涙を浮かべてロイに抱きついた。
エドを受け止めたロイはとても幸せそうな顔をしていた。
大総統とリザは顔を見合わせて頷いた。

この2人ならこの国を平和にできる

と。



















運命なんてあるんだね








なんで?








こうして君と出会えたのも運命だよ








違うよ








なにが?








運命はね必然なんだよ








必然?








そう、運命なんて自分で切り開くんだ








じゃあ俺達も運命に従って幸せになろう








当たり前だよ

だって








俺達が出会ったあの瞬間も必然だったのだから




END